未来を描く道標べ6(令和5年1月17日)「小学生全国大会の廃止」

未来地図 代表 代田昭久

全日本柔道連盟は、昨年、小学生の全国大会を廃止するという決断をしました。その狙いや現状について、金メダリストであり前日本柔道男子監督の井上康生さんにお話しをお伺いしました。

「小学生のチャンピオンは、オリンピックのメダリストになれない」。

小学生の時に全国大会で優勝した後、オリンピックでメダルを獲得できた選手はほとんどおらず、男子では井上康生さんと他一名。こうした実態は、ジュニア期の強度なトレーニングが、けがや燃え尽きの要因となり、また一つの競技だけではなく様々な競技を経験したほうがよいというスポーツ理論を裏付けるものであったそうです。

そして、「柔道は勝つための武道ではなく、生きる力を育むためのものであり、オリンピック選手を育てることだけが目的ではない」「体育の授業でも取り入れられている柔道が、勝ち負け以外にも様々な価値や魅力があることをより多くの子どもたちにも感じて欲しい」と言います。そして、柔道の父、嘉納治五郎先生の教えである「精力善用 自他共栄」(鍛えた心と体を善いことに使う。お互いに信頼し、助け合うことができれば、自分も世の中の人も共に栄えることができる)の精神に立ち戻る必要性を静かな口調で話していただきました。

スポーツにおいて勝利を追求し、そのために努力することは大事なことです。ただ、「勝利がすべて」なってしまい、行き過ぎた指導が問題になっているのも事実です。柔道を、より善く生きるためや平和な社会に役立てようとした嘉納治五郎先生の教えのもとに、小学生全国大会の廃止へと舵をきった柔道連盟の決断に私も共感します。理解が浸透しているわけではないので、まだまだ反対意見もあって大変だという状況はお聞きしましたが、正しいルールや技を学ぶイベントを新たに立ち上げたりして、今後も子どもたちのための改革を進めていくそうです。こうした考え方や実践が、柔道以外のスポーツ、さらには文化活動にも広がっていくことを願います。

■井上康生氏と (東海大学湘南キャンパスにて)

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