デジタル人民元とは?中国のねらいや世界経済への影響を解説

シェア

ツイート

LINEで送る

Pocket

ブックマーク

人民元の紙幣と硬貨

2019年10月、中国の政府系機関のある幹部が「デジタル人民元」について言及し、話題になりました。

デジタル人民元とは何か、また、デジタル人民元が実現することで中国あるいは世界経済にどのような変化が起こるのかについてまとめました。

デジタル人民元とは

スマホのキャッシュレス掲載

デジタル人民元とは、中国の通貨である「人民元」をデジタル化したものです。

人民元などの通常の通貨は、紙幣やコインといった目で見えるもので発行されます。

しかし、デジタル人民元は目で見えるものでは発行されず、オンライン上での使用専用の通貨です。

日本でもオンライン上の通貨はあります。

たとえば、au PAYやLINE Payなどのいわゆるペイ系通貨やビットコインなどの暗号資産です。

しかし、ペイ系通貨やビットコインはあくまでも「民間企業」が提供しているサービスで、それぞれの加盟店でしか使えません。

また、ペイ系通貨やビットコインそのものに貨幣価値があるのではなく、法定通貨(日本の場合は円)をペイ系通貨やビットコインに交換することで価値が生まれますので、言うなればオンライン型の商品券のようなものです。

一方、中国が実現しようとしているデジタル人民元は、中国の中央銀行が発行する法定通貨です。

別の通貨に交換しなくてもそのものに価値があり、また、使用場所が限定されません。

2020年1月時点でオンライン通貨を発行している国家はなく、実現すれば中国が世界初ということになります。

デジタル人民元が使われるのはいつから?

デジタル人民元の流通が始まる時期については、まだ中国政府や中央銀行からの正式な発表はありません。

しかし、2019年に政府系機関が「世界初のデジタル通貨を発行する中央銀行になる」という見通しを述べたことからも、早ければ2020年内には実現するのではと見られています。

デジタル人民元発行を支える要素1.中国のキャッシュレス社会の浸透

「いきなり通貨がデジタル化されてしまうと、中国国内でトラブルが起こるのでは…」という心配は杞憂です。

中国ではキャッシュレス化が進み、デパートや映画館、テーマパークなどの大型店舗だけでなく、個人商店や市場、露天でも電子マネーでスマートフォン決済が利用できます。

現金を一切使わずに何ヶ月も生活している方も、中国では珍しくはないのです。

デジタル人民元発行を支える要素2.ブロックチェーンの開発先行

通貨をオンライン化するということは、通貨をデータ化するということです。

目に見える通貨なら、盗難・紛失さえ注意すればなくなることはありません。

データ化した通貨の場合には「悪意を持った人物が外部から通貨データに侵入し、不正に通貨量を増減させてしまうのでは」と不安に感じる方もいるでしょう。

そこで役立つのが「ブロックチェーン」と呼ばれる技術です。

ブロックチェーンを利用すると、データを複数のコンピュータに同時に登録するため改ざんが難しくなります。

また、オンライン上で管理するため、ローコストだというメリットもあります。

中国はブロックチェーン技術において世界でも先端を走っており、すでに2万を超える関連企業がブロックチェーンを用いた事業に携わっています。

デジタル人民元で中国政府がねらうこと

北京の紫禁城と毛沢東の写真

ペイ系通貨が普及することで、私たちの生活は便利になっています。

現金を持っていないときでもスマートフォン1つあれば決済ができ、また、現金をATMから引き出す手間や手数料がかからない点もメリットです。

しかし、デジタル人民元は、数多のペイ系通貨とは異なり、法定通貨です。

オンライン通貨を政府主導で発行することで、どのようなメリットがあるのでしょうか。

ねらい1.データ管理による犯罪対策

デジタル人民元を導入することで、すべてのお金のやり取りをデータとして残せるようになります。

誤って詐欺集団にお金を振り込んでしまっても、データでお金の流れを突き止めることが可能になり、詐欺被害者を減らすことも期待できます。

また、実態がないため通貨偽造も減らせます。

お金の動きをデータ化することは、中国政府にも大きなメリットをもたらすでしょう。

マネーロンダリングや脱税などの違法行為の防止にもつながり、税収増加が見込めます。

ねらい2.人民元の国際化による「ドル」への対抗

現在、世界の約40%の決済はUSドルでおこなわれています。

中国は貿易大国ですが、人民元を使った決済はわずか2%にしか過ぎません。

USドルを使って決済をおこなうということは、アメリカの銀行を通して金融取引するということですので、決済の内容はすべてアメリカ側に知られてしまいます。

つまり、世界経済におけるアメリカの優位性はますます高まり、USドル一強時代が続くことを意味しています。

デジタル通貨は流通時の手数料が低く、しかも安全性が高いため、デジタル人民元が流通すれば貿易等の決済に人民元を利用するケースも増えると予想されます。

USドル一強の現状に一石を投じ、より公平な流通の実現も夢ではありません。

中国とアメリカには、「米中貿易戦争」とも言うべき貿易面での争いが生じています。

こちらの記事もあわせてご覧ください。

米中貿易戦争をわかりやすく知りたい!発端や経緯、世界の影響を解説

デジタル人民元の世界への影響

世界各国の国旗

中国国内ではキャッシュレス化が進んでいるため、デジタル人民元の流通が始まったとしても大きな混乱はないと予想されます。

紙幣やコインなどのリアル通過も引き続き使えるため、スマートフォンでの決済をおこなっていない方の生活が不便になるわけでもありません。

しかし、中国以外の国々はどうでしょうか。

大国である中国の通貨がオンライン化することで、世界にどのような影響が及ぶのかについて見ていきましょう。

「ドル」弱体化で経済制裁の効果が薄まる恐れ

第三国間の貿易でも、「信用が高い」という理由でUSドルを使うケースが多いのが現状です。

しかし、一旦USドルに両替するだけでも少なくない手数料がかかりますし、受け取ったUSドルを自国の通貨に替える際にも莫大な手数料が発生します。

少ない手数料で高い安全性が期待できるデジタル人民元が誕生すれば、USドル一強時代が終わりを告げるかもしれません。

世界経済もアメリカ主導型ではなくなっていく可能性があり、アメリカがUSドルを盾におこなってきた経済制裁の力も弱まると考えられます。

アメリカ内「デジタルドル」の動き

デジタル人民元の誕生によって、世界経済の勢力図が大きく変わる可能性があります。

もちろん、アメリカ側も黙って見ているわけではないでしょう。

アメリカ側はまだ「デジタルドル」の構想については発表しておらず、フェイスブック社が計画しているデジタル通貨「リブラ」に関しても待ったをかけている状態です。

とはいえ、いつまでも静観を続けるとは限りません。

2020年2月5日、米連邦準備理事会(FRB)のラエル・ブレイナード理事は、「FRBはブロックチェーン基盤のデジタル通貨に関わる研究・実験を行っている」ことを述べました。

米連邦準備理事会(FRB)は、日本における日銀と同じ、中央銀行制度の最高意思決定機関です。

アメリカの今後の動きに注目していきましょう。

デジタル人民元の発行で世界の経済事情は変化していく可能性あり

デジタル人民元の流通で、世界の通貨覇権図が大きく変化する可能性があります。

また、万が一、USドル一強時代が終焉を迎えるなら、私たちの生活にどのような影響が及ぶのかも想像がつきません。

米中の動きだけでなく、世界経済の流れと日本の動きにも注目していきましょう。

シェア

ツイート

LINEで送る

Pocket

ブックマーク

CATEGORY :
用語の解説

Copyright© 未来地図 , 2020 All Rights Reserved Powered by AFFINGER5.